踏み切りにて。
母親が、子供をあやすために電車に手を振っている。
「ほらほら~」
赤ん坊は、母親のわきの下に手を伸ばし、しっかり握った。
あの、小さな手には、不安が満ちていた。
母親は、赤ん坊にとって唯一の安心。
おれも、不安に満ちていた。
やはり赤ん坊のそれと同じだったかもしれない。
この大きな宇宙に、たった一人で生まれてきた。
生まれたら、そこには母親やその他もろもろがいただろう、
だけれど、ひとりで、未来への扉を開いていったのは間違いない。
たった、ひとり。
この不安に、赤ん坊は耐え切れるだろうか?そんなことはない。
まさしく本能的に、母親を絶対に信用する。
そう、本能が、そうさせる。
でもおれに、ひとつのものを信じることができるだろうか?いやできない。
育った理性は、母親だって人間のひとりだということを告げる。
母親はもうおれを安心させない。
かといって、このまま不安なままで生きていけるだろうか?やはりできない。
おれは何を信じてこの不安をやり過ごせばいい?
どうしたらこの宇宙の大きさに恐れなくてすむ?
見ないようにしてるね、誰もが。
目先のことにとらわれて、そんな大きなものを感じないようにしてるね。
この不安は、どこからでもやってくる。
生まれつき、信じる心はもってるのに。
どうして信じてやっていけないんだろう?
赤ん坊にあこがれちゃいけないかい?
もう恐くないよ。(って言ってほしいんだ。)
(註:()内は2006/09/12加筆。多分、こういう意味だったんだろう。)